2013年9月10日

新田次郎『槍ヶ岳開山』。

今年の夏は、北アルプスの槍ヶ岳(やりがたけ・3180m)へお客様をご案内すること4回。
槍ヶ岳は、若い頃に登山のベースとなる山小屋で2シーズン働いたことがあり、地形、その他は詳しいと自負している山です。

しかし歴史や文化についての知識はやや乏しいかな?という気もしていたので、それに備えて本を1冊読んでおきました。

読んだ本は新田次郎の『槍ヶ岳開山』。
あくまでも小説であり、歴史などを知るには取っ掛かりにしかならならないのですが、それでもかなりの取材を重ねて書かれた本です。

槍ヶ岳が初登頂された当時の、おおよその様子に思いを巡らすことはできました。


主人公は、富山の商人・岩松。
百姓一揆の際に、役人に反抗したことで追われる身となり、飛騨に逃亡して出家。
名前を播隆に改めます。

自分に厳しい修行僧だったのですが、そのうちに身を寄せた寺の「事業」に巻き込まれ、しばらく人の登っていなかった飛騨の名山・笠ヶ岳(かさがたけ・2897.5m)に登頂。
続いて笠ヶ岳で目にした槍ヶ岳にも苦難の末に登り、続けて穂先に鎖を下げようとするも、援助をしてくれた犬山藩と幕府との政争に巻き込まれ…。


といった感じで、ほどほどに俗っぽくもある、面白い小説でした。

余談ですが新田次郎の小説にはしばしば、主人公にからみつく、友人のふりをした小悪人、みたいな人物が登場するのですが、この小説にも存在します。

岩松と一緒に富山から逃亡した弥三郎という商人なのですが、物語の中でこの人が高山植物のコマクサを薬草として売りさばくことが描かれています。

コマクサはかつては本当に薬草とされて、例えば御嶽山(おんたけさん・3069m)などは登りやすい山でもあったため、絶滅に近いくらいまでに採取されまくったこともあるのだとか。

当時のコマクサは、腹痛の妙薬として信じられていたのだそうです。

けれども実際は薬草ということはまったくなく、服用すると嘔吐、体温低下、呼吸麻痺、心臓麻痺などの恐ろしい症状を引き起こす可能性があるのだそうです。
ぜったいにコマクサは口にしないようにしましょう!


ちなみに新田次郎については、雑誌『山と渓谷』の2009年6月号で特集が組まれています。
新田次郎山岳小説完全リスト」も掲載されているので、重宝します。
興味のある方は、ぜひお手元に置いておかれるのが良いでしょう。

一つだけ、読者アンケートでの好きな小説ベストテンを引用しておきます。

 順位タイトル 
 孤高の人
 剱岳<点の記>
 強力伝
 八甲田山死の彷徨 
 銀嶺の人
 栄光の岩壁
 槍ヶ岳開山
 聖職の碑
 芙蓉の人
10
 富士山頂

私が好きなのは、『銀嶺の人』。
女性としてはじめてマッターホルン(4478m)北壁を登った、若山美子さんと今井通子さんをモデルにした小説です。

主人公の二人が駆け出しの頃の場面では、湘南の鷹取山(たかとりやま・139m)や奥多摩の越沢バットレスでトレーニングをするのですが、憧れて私も若いころはそれらの岩場に通いこんだものでした。
懐かしい思い出です。

▼関連エントリー
市街地の岩場・鷹取山再考。 (2013年3月7日)
緊張感漂う越沢バットレス。 (2013年4月29日)

▼参考書籍
 

ついでに『槍ヶ岳開山』以外のベストテンの本も掲載しておきます。







さらに調べると、映画化・ドラマ化されている作品もあったのでまとめました。

▼関連DVD

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